高額納税者の登竜門『予定納税制度』

A『手取り増えませんね~』
B『増える要素があらへんからな』
A『確定申告している人たちって3月に毎年がっつり税金持ってかれるんですよね』
B『納税は国民の義務やからな』
A『一度でいいから税務署に札束持って、ばちっと叩きつけてやりたいですよね』
B『残念ながらそんな金もなければ、そんな期待もされてないな』
A・B『はぁ。。。』

単価88円(税抜)のカップ麺を啜りながら。或るお昼休みのやり取りです。
残念ながら、札束でひっぱたく事は所得の関係上永遠に縁はなさそうですが、もし、仮にものっすごい不動産のオーナーになった場合の納税はどのようになるのでしょうか。今回はそんな夢のようなお話です。

1.予定納税制度

 大まかにいうと、前年の所得を確定申告した結果、一定額を超える納税をした人を対象に今年の税金を3回に分割して納付する事とされる制度です。制度の主旨としては、『多額の税負担』を一度にするよりも、計画的に納付をしてもらおうという一回当たりの納税負担軽減を図る制度です。

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2.予定納税基準額

予定納税基準額(特別農業所得者以外)は、次の(1)または(2)の通りになります。(以下国税庁HP引用)

(1)次のいずれにも該当する人は、その人の前年分の申告納税額が、そのまま予定納税基準額となります。

①前年分の所得金額のうちに、山林所得、退職所得等の分離課税の所得(分離課税の上場株式等の該当所得等を除きます。)及び譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得の金額(以下『除外所得の金額』といいます。)がないこと。

②前年分の所得税について災害減免法の規定の適用を受けていない事。

(2)上記(1)に該当しない人は、前年分の課税総所得金額及び分離課税の上場株式等にかかる課税配当所得等の金額にかかる所得税額(除外所得の金額がある場合には、除外所得の金額がなかったものとして計算した金額とします。)から源泉徴収税額(除外所得の金額にかかるものを除きます。)を控除して計算した金額及び当該金額の復興特別所得税額の合計額が予定納税基準額となります。

意味が分かりませんね。国税庁HPの解説はいつもこんなんです。予定納税基準額15万円以上が予定納税額を支払うという前提で、2例紹介します。

ケース1:申告納税額=予定納税基準額となるケース

代表例として個人事業主が事業所得のみを得ているケースを想定します。

収入金額:2,000万円

所得金額:  500万円

所得控除:  200万円

この場合、所得税は所得金額から所得控除を差し引いた金額に所得税率、復興特別所得税率を掛けます。

(500万円―200万円)×10%-97,500円=202,500円・・・A

A×2.1%=4,252円・・・B

A+B=206,700円(百円未満切り捨て)

この場合、この場合、申告納税額=予定納税額=206,700円>150,000円の為、予定納税が発生する事になります。

ケース2:前年所得の内の一部が譲渡所得である場合

事業所得    :300万円

譲渡所得(不動産):200万円

所得控除    :200万円

この場合の譲渡所得は5年以上保有していた不動産(土地や建物)を売却した所得金額(利益)とします。

この場合、所得金額の合計はケース1と変わらず合計500万円ですが

(300万円―200万円)×5%=50,000円・・・A

A×2.1%=1,050円・・・B

A+B=51,000円(百円未満切り捨て)・・・C

200万円×15%=300,000円・・・D

C×2.1%=6,300円・・・E

D+E=306,300円(百円未満切り捨て)・・・F

C+F=357,300円

納税額は357,300円ですが、予定納税基準額はCの51,000円≦150,000円の為、予定納税は発生しません。

※予定納税基準額の解説上簡略化しておりますので、実際の計算の流れ、金額とは異なります。 

3.納付時期・納付額

(1)納付時期

この制度の対象となる所得は『予定納税基準額』を基準としたもので、この金額が15万円を超える方を対象に適用されます。納付時期は以下の通り。

・第1回納付: 7月1日~ 7月31日

・第2回納付:11月1日~11月30日

(2)納付額

納付額は、前年の予定納税基準額を3で割った金額。つまり、事業所得で前年90万円納税した方なら第1回、第2回とも30万円ずつ支払う事になります。

(3)延滞税

他の税金と同様、予定納税も支払わなければ延滞税の課税対象となっています。何らかの事情があり『こんな税金払えねえよ!!』という方は、払えないから放っておくのではなく、適正な処理をする必要があります。

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4.減額承認申請と還付

前章で『こんな税金払えねえよ!』という人は適正な手続きを行う事で予定納税の減額等と延滞税の発生回避を図る事が出来ます、これを『予定納税額の減額承認申請』と言います。

1月1日~6月30日の現況から所得税及び復興特別所得税の見積額が予定納税基準額より少なくなる人は7月15日までに所轄税務署長へ『予定納税額の減額申請書』を提出して承認されれば、予定納税額は減額、または免除されます。(10月31日の現況に鑑みて第2期のみ減額する申請も可能です。) 

5.まとめ

予定納税の性格はあくまで確定申告時支払うべき納税額の一部前納であり、減額申請により軽課されても、年税額は変わらない為、確定申告時に清算される事となります。大きな事業活動・環境の変化がない中で減額申請を行う事は事務負担の増加に鑑みると事務負担増の割に成果が見合わないものとなる一方で、廃業、被災等による営業停止など極端な売上減の場合には、予定納税の減額を図る手段はあると理解しておくのが良いでしょう。