パチンコ店営業問題その2『パチンコ店の収益システム』

今回はパチンコ店営業問題を順番に解説する第2段。
前回はパチンコ店がなぜ強引に営業するのかといういわば概要部分を解説していきました。今回はパチンコ店がなぜ儲かるのかを解説していきます。

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パチンコ店損益計算書

今回はパチンコ店の収益を考える上でちょっと会計のお勉強をしていきます。
勉強は不要という方は読み飛ばしていただいても結構ですが、会計は暮らしを豊かにする上で必須の知識です。読んで頂ければきっと役に立つと思います。

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さて、一般に商売をしていれば個人でも法人でも、使用する科目に多少の違いはあれど申告書を作成する必要があります。
難しく考える必要はなく、ただの売上から順番に経費を差し引いていく引き算です。

  1. 売上ー売上原価=売上総利益(粗利)
  2. 粗利ー販売費・一般管理費=営業利益(本業の損益)
  3. 本業の損益+営業外損益=経常利益(平常時の損益)
  4. 平常時の損益+特殊な損益=税引前当期純利益(税金を計算する損益)

こんな具合です。パチンコ店は前回掲載したとおり特殊な業種で、まず売上原価が存在しません。そしてその分販売費・一般管理費が異様に高い
具体的な内容としては固定資産税、水道光熱費、建物、機械の減価償却費、人件費などが当てはまりますが、他の業種に比べこれが特に高い、といって語弊があるなら店舗規模に比して高額過ぎるというのが正確かもしれません。

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次に営業外損益、ここに入るのは主に借入金の利息など。
最後に特別損益、ここは固定資産の売却損益など。
これらも異様に高額だろうことが予想されます。

パチンコ店の経費を順番に解説

固定資産税、賃借料、建物減価償却

まずこれらは建物自体にかかる費用です。店舗の立地や形態によって違いはあれどいずれか、もしくは全部が発生します。これが一番高額です。

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二昔ほど前なら駅前一等地、今はロードサイドに広大な敷地面積を用意するのがパチンコ店。当然その費用は莫大です。駅前なら賃借、ロードサイドなら自社管理物件の場合もありますが、その分来店者の足は車に限られるのでお店に付設する大きな立体駐車場は必須。広大な店舗に駐車場、考えるだけでゾッとするような額の費用が発生していることは想像に難くありません。

水道光熱費・人件費

多少の違いはあるものの、パチンコ店の営業時間は10時~23時。これが地域によって一時間程度ずれがあったり、新台入れ替えで早く閉店したりといった例外はあるものの、概ねこんな感じでしょう。
この間、お客さんが座っている・いないに関わらず店内の空調は回りっぱなし、台の電気は入れっぱなし、他にも玉・メダルの洗浄から勿論外灯・照明まで色んなところで水道光熱費は正に垂れ流し状態です。

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また人件費も同様、遊技台への不正行為や玉・メダル自体の不正などに対応するため、時間によってはお客さんの数より店員の数の方が多いなんてこともあり得るくらいです。最近の台は不使用時節電モード搭載のものもあれば、人件費の多くはアルバイトで賄われているにせよ、数字だけ見ればかなりの高額が計上されています。

機械減価償却費、消耗品費、固定資産売却損益など

具体的に言えばパチンコ台の購入費用がこれに当たります。これが仕入れがないパチンコ店の仕入れに変わる費用と言えるでしょう。
近年ド派手で大きな液晶画面を搭載し、演出のギミックも多彩になった遊技台はそれに比例するだけ高額。特にパチスロ台の高騰はとどまることを知らず、最新機種だと100万円超えなんて当たり前。

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一方で新台は後から後から導入され、人気のない台はどんどん刷新されていきます。
損益計算書上、単品で30万円を超えるものは減価償却といって複数年に渡り(パチンコ台は2年、スロット台は3年)費用化されます。30万円以下のものは特例計算によって、1年で償却されます。つまり行き過ぎた言い方をすれば、1年で(あくまで会計上ですが)ゴミになるんです。
これら遊技台は車と同様、大量導入すればボリュームディスカウントされたり、新旧の入れ替え時に下取りという形で引き取ってもらえるものの、入れ替え毎に大量のキャッシュを動かさざるをえないことになるわけです。

借入金返済と利息

新台入れ替えは店舗規模によりますが、よほどの人気機種でもない限りパチンコ店に定着する期間は半年~1年程度。この都度台の入れ替え費用を捻出しなければいけない訳で、これを自前の資金だけで回していくのは不可能。相当額の借り入れがつきまといます。現在はマイナス金利なんていわれるような低金利時代とはいえ、上述の固定費の支払いに加えて元本の支払の上で利息がつきまうのはあなどれないところでしょう。

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あと、借入金の最も厄介な点は当たり前といえばそうなんですが、損益計算上元本返済分は費用として一切カウントされません。黒字倒産という言葉がありますが、決算書上の損益というのは

  • 利益=お金が増える
  • 損失=お金が減る

一概にこうなるとは限りません。儲ける為にお金を借りたものの、借りた額が多すぎて月々の返済が間に合わず儲かっているのにお金がなくなってしまい、結果倒産してしまうというのが黒字倒産といいます。

利益率は店次第

小難しい話が続きましたが、次はパチンコ店の利益の話です。
前回触れた通り、パチンコはギャンブルではありません、遊戯つまりお遊びです。
これは法律上の取り扱いを異ならせる事以外にも決定的な違いを生み出します。
それが還元率です。
競馬など他のギャンブルは全てそうですが、競馬・競輪・競艇オートレースは全て還元率が75%前後と言われています。つまり、お客さん全体という観点から言えば親である中央競馬会なりは3/4は返ってくる計算になります。
対してパチンコ・パチスロの還元率は80%前後、数字だけ見ればお金が返ってくる額は多いように見えますが、ここに二つのからくりがあります。

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パチンコ店の還元率は非公表

他のギャンブルと違い、パチンコ店は還元率を公表する必要がありません。だって遊戯ですから。パチンコ店自体は換金行為を行っていないので還元率も何もあったものではないんです。上の還元率80%というのはあくまで機械割という大当たり確率とお客さんが玉・メダルを買った、売った(交換した)レートをかけ合わせた理論値でしかありません。公表しないんですから、還元率を絞るのも還元率を上げて店を盛り上げるのも全てお店の気分、と言って悪ければ戦略次第ということになります。

パチンコは必ず払い出されるとは限らない

宝くじを除く公営ギャンブルはレースがあって、そこに馬券(勝馬投票券)なりを購入してギャンブルに興じます。当たるか当たらないかは本人次第ですが、レース参加者が極端に少ない等のことがない限りそこに必ず勝者は存在し、必ず払い出しは還元率に基づいてレース毎に必ず行われます。

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それに対してパチンコが払い出しを行うのはお客さんがボーナスを引き当てたケースのみ。ず~っと遊戯をし続ければ、確率通りに収束するのかもしれませんが、そんなわけにいかないですよね。巡りが悪ければその台からボーナスが一回も出ることなく一日を終えれば、その台の還元率は0%ということになります。これって80%って本当に言えますかね。中には上手に勝ちだけを拾う立ち回りができるいわゆる『パチプロ』、個人的な収支をプラスに出来る存在は中にはいるものの、お客さん全体で見れば実質的な80%はとても現実的な数字でないことがわかります。
※加えて言えば、このパチプロという存在をパチンコ店は悪と見なしていて、中には入店を断るお店もあります。

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競馬にせよ、宝くじにせよ当たりを換金しない大部分し忘れたとか外れたと勘違いしているのが大半なのですが、払い戻しがなされない事は往々にして発生します。
ですが、当たりを引かれるまでに打つ人がいなくなれば、もしくは閉店を迎えれば自動的に競馬で言うところの換金し忘れと同じ状況が発生するパチンコ店のそれは決定的に違います。

店は客ではなく固定費と戦う

ギャンブルとは通常親である胴元(競馬ならJRAとか)と子であるお客さんとの勝負であるはずなんですが、パチンコに関しては違います。勝っている人が負けている人を煽る材料と考えれば、お客さん全員カモなんです。お金を吸い取る対象でしかありません。そんなお店が常に戦っている真の敵は上でも述べた固定費なんです。

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パチンコ店は固定費回収以上に集客ができれば必ず儲かるし、固定費を上回ることが出来なければ膨大な固定費に一瞬で踏み潰されてしまう。そんな綱渡りのような経営がパチンコ店の運営です。
そんな叶うなら24時間開けていたいパチンコ店にとって新型コロナによる営業自粛なんてもってのほか、莫大な固定費を売上0で賄うことなんて出来ないから無理やり営業をしようとするんです。

パチンコ店は自転車操業

これはコロナ自粛に限った話ではありませんが、ファシリティ(設備管理)関連に個人的な知り合いがいてその人から聞いた話によると保守料金の支払いが一度でも滞れば出張をしないように言明が出ているんだとか。
何のことかわからないですかね、順番に解説します。
パチンコ店って空調や電気、その他諸々色んな設備があります。大きな店舗で一度に1000人くらい収容できる施設もあるくらいなので、それに比例して店舗維持にかかる設備も大掛かりになるというわけです。それらは当然メンテナンスも必要で、故障したら専門業者に来て直してもらう必要があります。

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それを職業とするのが設備管理を担う会社さんなんですが、パチンコ店は大のお得意様なんだとか。まあ設備が大掛かりなため保守にかかるコストも多くならざるを得ないというのもあって、密にお付き合いしているのが常なんですが、一方で超大型チェーンでもない限り、資金繰りに難儀しているのは周知。その為、メンテ屋さんも余計に出張費がかさんだ挙げ句、不払いを解消してもらえず潰れられても困るというわけです。
資金繰りが潤沢な業種と言うのもそれほどあるとは思えないですが、それでも資金繰りがアップアップのところが他業種に比べ圧倒的に多いお店が多いというのがある種業界の常識としてまかり通っているのは少し異様です。
平時からそんな調子で経営しているパチンコ店ですから、本音を言えばお店を1ヶ月も閉めるなんて、とてもじゃないですができないというのが正直なところなんでしょう。

筆置き

今回も長くなってしまったので、一旦ここらへんで筆を置きます。
この章でパチンコ店は開け続ける限り儲かるし、閉めてしまえばすぐに潰れてしまう事を書き連ねてきたつもりです。ここで言いたいのはそんな余裕のないパチンコ店がお客さん側を楽しませるために正当に還元する余裕があるのかということ。
まともな考え方ができる人は今の時期パチンコ店なんか行きません、感染リスクが高すぎます。そしてそんなリスクを犯してきてくれたお客さんに多く還元しようなんて考えは全くありません、元々が苦しい上に全体としての客足の減少は免れないわけですから。

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40兆円産業と言われたかつて隆盛したパチンコ業界の規模は今や半減の20兆円すら割っているとまで言われています。そんな種々のマイナス条件が重なって今更良い目が見れるわけがないのはちょっと考えればわかることなんですが、残念ながら休業要請に応じないパチンコ店に群がる人だかりからどうやらそうはなっていないようです。
次回はそんな悪条件の揃ったパチンコ店になぜ人が群がるのか、そしてその奥に隠れた真の問題点を追求していきます。